真っ先にCHICAGOの"Questions 67 and 68"を連想した私ですが音像はそれより遥かに穏やかなブラックコンテンポラリー風のバラード。"行き過ぎたくらい愛されてスゴイ"そして"折れそうなくらいサヨナラは辛い"というからTUBEが得意なひと夏限りの恋の歌でしょう。でもあちらよりひと回り上のサザンに掛かればこういう大人の雰囲気重視な曲が出来上がります。NIFTY-ServeのCMソングとかアナログ人間には縁の無い話ですなぁ。
デビューから10年の歳月をかけてコツコツと実績を積み上げてきたハンク・エリックス(Vo)率いるスウェーデン出身のメロディアス・ロック・バンドHOUSTONが、FRONTIERS RECORDSとの契約を得たことで、ようやく本邦初見参を果たすこととなった’21年発表の4thアルバム。 シンセ・リフが淡々と刻まれるOPナンバー①が、6分を超える長尺の割に(このバンドにしては)イマイチ掴みに乏しいため一瞬不安を覚えたりするものの、なんのなんの。初期作をクリエイティブ面から支えたプロデューサー/ソングライターのリッキー・デリンと久々にがっぷり四つに組んでレコーディングが行われているだけあって、2曲目以降で本編は大きく盛り返しその不安をしっかりと払拭してくれます。 ハンクの伸びやかな歌声が主役のAOR/産業ロック寄りのポップなサウンドを基軸としつつ、アップテンポのロック・チューンも要所に配置して緩急を演出。もろに“EYE OF THE TIGER”風な⑦が物語る通り、全体的にSURVIVOR(というかジム・ピートリック)リスペクトを伺わせる仕上がりとなっており、とりわけヴァースからコーラス・パートにかけて聴き手をグッと惹き込むメロディ展開の巧みさには舌を巻きますよ。清涼感を振りまきながら駆け抜けていくハードポップ④、1曲の中で暗から明へとメロディが豊かなグラデーションを描く⑧、広がりを感じさせるサビメロが得も言われぬ高揚感を生み出す⑪辺りは、本家SURVIVORにも肉薄する魅力的な名曲となっているんじゃないでしょうか。 キャリアに裏打ちされた安定感と安心感に心和む1枚となっています。